業務専用に開発されたスマートフォン、通称タフネススマホは、現在カシオ、京セラ、パナソニックなどから発売されています。これらのスマートフォンは総じて業務に特化した特長や強度を持ち、通常のスマートフォンとは異なる特性を重視して開発されています。
本記事では、どのようなスマートフォンをタフネススマホと呼ぶのか、その特長と使用されている業界、一般のスマートフォンとの違いや実際の商品について解説していきます。
この記事の目次
タフネススマホとは?
厳密な定義はありませんが、タフネススマホとは総じて非常に頑丈であり、過酷な環境下でも動作が可能となるスマートフォンのことをいいます。
具体的には、IPX8に相当する高い気密性と防水機能を持った機種や、IP6X相当の防塵機能を有する機種など、耐衝撃、耐氷結、耐震動、防湿などさまざまな耐久性を持ったスマートフォンが対象となります。
過酷な環境に置かれる業務の現場において、さまざまな使い方に耐え得る強度を持つことが最優先された仕様であるため、一般に流通している通常のスマートフォンよりもはるかに強度があり、多少の落下程度では画面が割れることも故障することも滅多にありません。
防水防塵においては通常のスマートフォンよりも高い気密性を維持するよう設計されており、IP68のスペックを持っていたとしても通常は使用を避けるべきとされている高温多湿の環境でも、内部に水蒸気が侵入しないようになっています。一方で、スマートフォンとしての基本スペックはおおむねエントリーモデルからミッドコア程度と、アプリケーションを多用して運用するにはあまり向かない機種といえます。
タフネススマホが使用されている業界・職種について
IoTを導入した物流管理現場は、スマートフォンと相性が良いため、専用の業務端末が積極的に導入されています。また、建築や解体のような工事現場では、予期せぬ落下や衝撃、埃の侵入による故障を防ぐ機能が求められます。畜産、魚河岸、生鮮卸し市場では、水濡れの可能性も意識しなければなりません。氷温倉庫では、低温性能や耐氷結性能も必要となります。
業務専用端末として、このような現場を想定して開発されているタフネススマホは、堅牢性や耐久性に加えて、サーマルカメラやトランシーバー、かすれていても読み込めるバーコード・2次元コードリーダーなど、通常のスマートフォンにはない業務向けの機能が多数搭載されているため、業務内容に合わせてさまざまな現場で使用されています。
一般スマホとの重量比較
堅牢性重視で設計されたタフネススマホは、一般向けのスマートフォンと比較すると重量が重い機種が多くなっています。そのため、趣味や普段使いに使用するには少し重く、長時間のアプリケーション使用には向きません。
最新のスマートフォンは高機能で大型のディスプレイを搭載したハイエンド機種でもおおむね200g前後に収められています。
一方でタフネススマホは、業務用の専用端末として設計されているため、堅牢性を維持するためのプロテクターや強度の向上が重量の軽減よりも優先されます。そのため、200gを超える機種が大半で、本体のデザインもしっかり掴んで落としにくいことを重視しています。わずか数十グラムの違いですが、タフネススマホを実際に手に取るとズシリとした重量感があり、重さを感じるでしょう。
ただし、タフネススマホは基本的に本体にプロテクターが装着されているため、新しく保護用のケースを購入する必要はありません。そのため、一般向けのスマートフォンでも重量のあるケースを装着すると重量が逆転することがあります。
業務専用端末(タフネススマホ)の商品を紹介
業務専用端末として国内メーカーが開発・発売しているタフネススマホは、カシオ、京セラ、パナソニックの3社から出ているものが主流になっています。
カシオET-L10-WC21
業務専用端末として開発されているスマートフォンです。バーコードや二次元コードを読み取る高性能の2Dスキャナーを端末頭部の先端に搭載し、本体のフロントや側面左右にスキャン用トリガーキーをレイアウトするなど、スキャン時の使い勝手を格段に向上。棚卸や在庫照会等に利用できます。
さらに、高性能の2Dスキャナーを端末頭部の先端に搭載し、本体のフロントや側面左右にスキャン用トリガーキーをレイアウトするなど、さまざまな持ち方に対応しています。1.5mからの落下に耐える耐衝撃性や、IP65相当の防塵・防水、-10度~50度に耐える耐温度、75%の消毒用アルコールに対応する耐薬品性能など、過酷な作業環境や医療の現場にも対応可能な堅牢さを持っています。
通常のGPS&LTE通信のほか、PTTキー(トランシーバー用の通話ボタン)を搭載しているためトランシーバー用アプリケーションを導入することで、他の業務専用端末へ一斉連絡をおこなうことができます。
https://sys.casio.jp/ET-L10/spec.html
京セラTORQUE G04
auから発売されたTORQUE G04は一般ユーザーにも普及しているタフネススマホです。業務専用に特化した端末と比較すると、業務でも使用できる堅牢さを持ちながら、重量も200gと軽量。業務専用端末は重いという難点を克服し、一般ユーザーが求めるトレンドスペックにも対応しています。
水深2.0mの海水に約60分間沈めても内部に浸水せず電話機の性能を保つ耐海水性能や、約2.0mの高さから鉄板やコンクリートに落としても破損しない耐衝撃性を持つなど、優れた堅牢性を有しています。また、2,400万画素のレンズを持つカメラを搭載しているため、海や山でのアクティビティレジャーにも最適。
ハードウェア面で各種アプリケーションの起動や着信の応答、終話などが設定できる大型ボタンや屋外ハンズフリー通話も聞き取りやすい、100dB(3kHz)/10cmの大音量ステレオスピーカーなどの業務専用端末の機能を搭載。ほかのタフネススマホと比較すると、業務専用端末としてはやや不足する部分はあるものの、トランシーバーアプリやバーコードリーダーアプリ、電子小黒板アプリなど業務用アプリケーションを使用することで十分に補完でき、さらにMDMなどと連携することでハイスペックな業務専用端末として運用することができます。
https://www.kyocera.co.jp/prdct/telecom/consumer/lineup/g04/
パナソニックTOUGHBOOK FZ-N1
頑丈な造りでありながら高いモバイル性を有することで、建築現場や物流現場で人気が高いTOUGHBOOKシリーズのスマートフォンです。物流・配送、流通・小売、建築・土木、医療などの過酷な使用が想定されている現場に耐えるよう設計されています。バーコードリーダーやフロント画面に設置されたNFCリーダー、高輝度フォトライトなどを搭載するなど、ハンディターミナル、PDAなどの機能を集約しています。
OSはAndroid8.1を採用しており、EMMツールと連携することでIT管理者による端末の設定から状態まで一元管理することができるようになっています。また、搭載されているCPUはQualcomm SDM660で、動画の閲覧やゲームアプリの処理には向きませんが、業務用アプリケーションの処理には十分な高い処理能力を持ちます。リアカメラは1.0mの距離で100ルクスという明るさを実現した夜間撮影用フォトライトを搭載しており、工事や建設の現場での夜間撮影を想定しています。
https://panasonic.biz/cns/pc/prod/pad/n1/
なお、ここで紹介されている以外の機種については、こちらをご確認ください。※英語のみ※ https://androidenterprisepartners.withgoogle.com/devices/#!?device_features=rugged
今回ご紹介した機種はどれも耐衝撃・防水・防塵に特化しているため、屋外で活動する建設現場や工事現場のような場所でも利用ができます。タフネススマホの製品選定のお役に立てれば幸いです。
おわりに
タフネススマホは業務専用端末として、強度や堅牢性だけでなく、さまざまなハードウェア面での配慮がなされた設計になっています。 これらの端末とMDMを組み合わせることで、IT管理者による一元管理が可能となり、端末情報やセキュリティの面での安全性の確保、業務用アプリケーションのインストールと設定、データのバックアップなどを行うことで、業務端末としてより強化することができます。
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